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タクヤ先生の日々のつぶやきを文章にしております。時々破天荒なことをつぶやくこともありますが広いお気持ちでご覧ください。一部で「読むと疲れが取れる」、「悩むのがバカバカしくなった」というお褒めの言葉をいただいております。ええ、多分褒めてないですよね。ご覧あれ。

ロマンスカーラプソディ 

2018年6月 4日 16:10(できる限り)毎日更新 乱れ書き日記

5月某日 21時08分

新宿→町田行き ロマンスカー車内

ハァハァと止まらない動悸が生み出す自分の荒い息遣いを抑えることができず、溢れる破壊衝動に駆られながら隣席に座る「それ」に対しての意識を逸らすことができずにいる自分がいる。流れ落ちる汗、ほとばしる殺意。自分が自分でないようなこの感覚・・・ッ!

どうして?
どうしてこうなった・・・?
自問自答するが興奮する脳内ではたぎる怒りと形容できない熱量が渦を巻き冷静な思考をこれでもかと邪魔してくる。

それでもなんとか記憶をほんの数分前、新宿駅をこの車両が出発する直前に戻してみる・・・


5月某日 20時57分

いつものように新宿での漢方セミナーを終え、21時発のロマンスカーに乗り込む。
自分の指定されたシートに深く腰掛けると講義の疲れをまるでそのシートに吸い取ってもらうかのように体を脱力し、目を閉じて身を委ね、ふーっと一息深々と息をつく。この瞬間がたまらなく好きだ。それを楽しみに少し値は張るが毎回講義の帰りはこのロマンスカーを利用している。

いつもならほぼ満席の車内だがこの日はなぜか席の所々に空きがある。
私は窓際の席が空きで、この日も例外なく窓際の席を予約済みだ。
「4号車3のA」これが今日の私の席だ。

出発までの時間を見るともう1分くらいになっている。早く席に座らねば、と思い3のAの席に急ぎ向かい前に立・・・つ?

「・・・・・・」

私の席に70歳位の婦人が座っている。
レディへの敬意を払い「婦人」と形容させていただいたが、巨大なスーツケースを通路に出しており(死ぬほど邪魔)、そこに並べてなぜか2本の巨大なホウキが飛び出している。

「・・・・あの」

声を掛けるがなぜか苦しそうな顔で目を閉じて何かを呟いている。

この時点でもう嫌な予感しかしないのだが少し大きく声をかけてみる

「あの、すいません!」

次の瞬間 ビクウッ!!と電流を流されたお笑い芸人のように体を痙攣させた後に驚いたかのように目をカッと見開き私を見る。
発射のベルが鳴り、電車が動き始める。

「あの・・ですね、ここ4号車3のA、私の席なんですが」

動き出した車内で間抜けな感じで立ちながら耳でも遠くても嫌なので少し大きめのトーンで予約したチケットを老婦人に見せる。
次の瞬間

「あんれーーー!!ここあんたの席け!!んじゃあわたすの席はどうちらだぁはぁ!!」

大きめに出していた私の5倍位の声量で返事が返ってきた。
思わず「知るか」と衝動的に口走りたくなる気持ちを必死で抑えながら笑顔を作り

「チケットとかお持ちでは?私が見ますよ」

と告げる

「大井町に住んでる娘夫婦が小田原まで帰るの大変だろうって予約してくれたんだぁ それがまぁはぁなんてこったあこんなお兄さんの席とっちまうなんて申し訳ねえことしちまってはぁ!!」

「大井町はどうでもいいから」と喉元までボコボコとこぼれ出てくる声を腹筋で殺しながら笑顔を崩さず「チケットを」とだけ絞り出します。

「すまねえなあお兄さん、ちょっと見てくんろ」

と出してきたチケットを見ると7号車5のDと書いてあります。うん、ひとつたりともあってねえな。


「御婦人、ごめんなさい号車も席番も違いますね・・7号車みたいですよ」

「はぁ!?7号車はぁ!?こりゃあすまんこってす」

どうでもいいけどさっきからのこのはぁが地味に気になります。

そしてよくよく考えるとこのロマンスカー、6号車で連結されているので7号車にはいけません。運よく、というかこの日の私の席の隣は偶然空席のようです。その旨を御婦人に伝えてあげて、車掌さんが通りがかったらとりあえず話を通してあげるよ、という風に伝えて(この意味不明なホウキごと移動させるのも忍びないので)とりあえず私は通路側の隣席に座ります。

「いやあ、久しぶりに東京来てみたんだけどもお兄さんみたいな親切な人がいてもホントにはぁありがたいこってす!いつも仏壇に手を合わせてるおじいさんのおかげだはぁ!」

少々脳髄にビキビキ来ましたがまあようやく自分も(自分の席ではないけど)席に着くことができ、町田までの30分をゆっくりとシートに深く沈み込・・プシュッ!ブシュシューーーーーッ!!「ああ!すまんこってすお兄さん!わすのビールがぁはぁとんだ粗相を!」おい何してんだああああああああ!!

隣席からいきなり大量のビールの泡がぶっ飛んできました。アメリカのコメディレベルです。

「・・・・・いや大丈夫ですから」
ビールの泡まみれになったスーツを必死に拭きながら高ぶる気持ちを横隔膜で必死に抑えます。

この間「ああ・・すっかり気がぬけてしまっただ」と残念そうにビールを飲み続ける老婦人。
もうあれだ、寝ろ 寝てしまえ自分。
これ以上相手にしたらおかしくなる。

車掌さんが来るまで様子を見ていてあげようかと思いましたがすでにそんな気も失せましたので今度こそ腕を組み目を閉じてシートにゆっくりともたれかかr・・何これメッチャ臭えええええ!!!

信じられない臭いがして横を向くとおつまみになんかおかしなチーズみたいな何かを食べています。正確にはわかりませんがブルーチーズ?以前にもブルーチーズを隣席で食べていた中国人観光客もいましたがその比ではありません。とにかく車内にテロレベルのとんでもないスメルが立ち込めます。もはや私の適応能力がついていきません。さすがの異臭に前後の席からもざわざわと声が上がり始めました。

「どうしたお兄さん?!急に起き上がって!?ビール飲みたいのけ?!」

「いや・・結構です・・ちょっとそのチーズもどきの臭いが・・」

「はぁ!?ああ!チーズ!お兄さん〠¶§(←解読不能)チーズ好きけ!!ええよ!ほれ!遠慮せんと食べはぁ!」

「嬉しいですけどご遠慮します。いや、ちょっと車内だとその臭いは苦手な方もいらっしゃるかなあと」

「ああー!それはわかる!わすも昔はこの臭い駄目でなぁ!大井町の娘夫婦が「おかあさん美味しいから食べてって」何度も言うんでおっかなびっくり食べてたらまぁほんとにクセになっちまってはぁ!」

何してくれてんだ娘夫婦。


結局 町田まで車掌が現れることはなく、講演終わりの疲れた体と心にムチを打たれ続け、最後に「これおみやげだぁ」となぜか小田原のかまぼこを手渡され家路につきました。触れるものみな傷つけそうです。